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過失があるとの主張?

裁判で過失があるということを主張する場合、被告には過失があると主張してもそれでは足りません。この過失というのは、評価であって、〇〇をしたら、必ず過失かというとそう単純なものでもありません。こういったものを規範的要件というのですが、過失を根拠づける事実がA、B、Cとあったとします。(例えば、〇〇をしなかった)なるほど、確かにそれは過失だなと裁判官がそれで判断すれば、過失と認められそうですが、反対となる事実としてD、E(だけど〇〇はしたからね。)があったとします。そうすると、全体として過失があったかは総合判断して考えることとなり、過失だと認定されないこともあります。

順番に考えていきます。過失主張で最初に超えないといけないのは、過失を根拠づける事実です。(評価根拠事実といいます。)まずは過失だと言える根拠がないといけません。つまり、根拠づけ事実がAしかなく、それだけだと過失だと言い難いというような場合には、D,Eの登場を待たずして、過失ではないことになります。

過失だと言えるだけの根拠事実があって、初めて反対事実D,E(評価障害事実といいます)が本当かなというところの議論に入ります。このD,Eは過失の根拠となったA,B,Cと両立する事実となり、A,B,Cの事実自体を否定しているわけではありません。A,B,Cという事実があってそれで過失だと評価されたとしても、その「評価」をD,Eでももって覆す為のものというわけです。つまり、D,EはAやB、Cの事実などなかったはずだとして主張立証(こういった活動の場合、反証という。過失じゃないと主張したい側が、過失の根拠となるA事実がなかったかもなと裁判官に思わせる活動)するためのではなく、D,Eの事実があったということを反論する側で、主張立証する必要があるのです。(本証。過失じゃないと主張する側でD,Eがあったということを立証する必要がある。)

次に、裁判官は、D、Eがあったとしても総合的に過失を排斥するかというとわかりません。これは、A、B、Cを全部立証できていた場合も、同様で、ひょっとしたら過失を根拠づける(評価根拠事実)Xもないと裁判官は過失だと、そもそも評価しないかもしれません。

このことから来る規範的要件の特徴で、「過剰主張」についての考え方があります。裁判を争う当事者とすると、裁判官に過失だと認めてもらう為に(若しくは過失だと評価させない為に)、いくらでも根拠とする事実について主張、立証を加えたとしても、過剰主張だということには法律上ならないというものです。規範的要件ではない場面で「AとBという事実があれば、Zという権利が発生する。」(例えば、A返済約束とおB金の交付という事実があれば、お金を返せという請求権が発生する。※請求権行使の為の要件が別にあるので、請求するにはこれだけでは足りていませんが、ここでは割愛します。)ということになっていたならば、別のCという事実を主張したならば、「それは法律上は不要だよ」ということになります。一方、規範的要件は全体として「評価」するので、C主張をしてなかったら、ダメかもしれないし、足りてるかもしれません。反対事実の有無によっても全体評価は変わるでしょう。結局、最終的に裁判官の判断することなので、裁判を戦う側からしたら、どれだけやれば大丈夫かはわかりません。ですので、過剰主張ということにならないのです。

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