業務トピック

相続人全員(のみ説)の法務局、非のみ説の裁判所

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効とされています。ところで、この相続人全員ということについて、裁判所と法務局では扱いに違いがあります。
裁判所は、非のみ説といって、相続人Aが原告になって、相続人Bを被告とした裁判をしたとき、相続人が他にいないことは原告が主張する必要がないとしています。相続人Cも実はいるんだから、遺産分割協議は無効だというとすれば、それは相続人B側でしなければならないということです。そういった反論をBがしなければ、実はCがいたとしても、相続人AはBに対する限りでは、勝訴します。(ほかに論点がなければ)
ところが、法務局では、これ以外に相続人がいないことを裁判所で認定されているか、B自身が認めていませんと、相続人が本当にこれで全員なのかどうか疑問に思います。戸籍類で全て揃っていればよいですが、そうでなければ、結構まずいことになります。例えば、相続人が外国籍などで戸籍がない場合には、相続人側でそれに間違いない旨の書面を作成して法務局に提出します。裁判になっているという場合、当該相続人にはそれで間違いない旨の書面は作成してもらえない状況であろうことから、裁判所で取った判決書だけでは、相続人全員であることの資料が足りずに、登記できない危険性があります。(法務局によって判断は異なります。)
裁判所と法務局の取り扱いに違いがあり、裁判所の方が、この場面では要件が軽いので、先の手続きとなる裁判は通ってしまうところが問題のなりやすさを内在しています。

なお、のみ説による相続登記は、相続登記放置が社会問題になったことで、一部ではありますが、手続きは通達により緩和されています。登記は判例(いわゆる判例射程という問題。)と違い、通達に柔軟性はあまりありませんので、ストレートに一致しませんと、緩和対象にはならない恐れが大ですので、とても怖いところがあります。

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