業務トピック

解雇予告手当請求のポイント

解雇予告手当の金額は一か月分の給料くらい

解雇予告手当は、30日分の平均賃金となり、概ね1月分の賃金相当額ということとなり、解雇無効で争う場合と比べると争う規模としては、小さくなります。その方の給料によるわけですが、解雇予告手当の請求額は20~40万円くらいとなる方が多いかと思われます。
一方解雇の場合は、請求金額というのは、毎月の給料を支払えというものとなり、完全勝ち筋での和解での目安は、正社員が半年から1年分の給与相当額~アルバイトで1か月分の給与相当額となり、解雇予告手当の方が、請求規模としては小さくなりがちです。意外と勝ちにくいところがあります。

解雇予告手当の請求には、いつ解雇を告げたのかが大きなポイントになる。

まずは、裁判所にどういったことを主張する必要があるかをまず考えてみましょう。

1 雇用契約(締結日、合意した労務、合意した賃金の内容)
2 解雇の意思表示とそれを告げた日
3 退職日
4 手当の計算根拠となる30日分の計算

1の雇用契約の内容はそもそも争いにならないことが多いでしょうし、3の退職の日(つまり会社にいる最後の日)についても、そんなに問題にならないことが多いかと思います。4の計算根拠は、つまりは過去3か月の平均賃金から割り出すのですが、残業代に論点がなければ、給与明細から概ね主張も立証も問題ないことかと思います。(残業代が発生している場合は、その分も平均賃金の計算の対象になります。ですので、過去3か月の間に残業が発生していた場合は、その分、解雇予告手当も増えることになります)

問題1 解雇の意思表示があったこと。

解雇予告手当が発生するには、まず解雇であることが必要です。
ところが、これが意外と難しい論点となります。 解雇されたことを労働者側で立証しなければなりません。自分で辞めただとか、合意退職だとかとなると解雇予告手当は発生しないのです。
そして、解雇だったということを労働者側で主張立証する必要があるのです。
よくある場面では、「解雇するので、これにサインしろ!」と言われて書いたら、それが自分で辞めるという書面だったり、合意で辞めるとかいう書面だったりします。
こういった書面がある場合は、かなり不利になります。
というのは、書面に労働者のサイン又は押印がある場合には、その書面は、労働者の意思で作成されたものだと推定を受けるのです。
本当は納得していないなどということはよくあることですが、サイン、押印してしまうとそういった反論はかなり困難になります。

問題2 解雇を告げた日

解雇予告手当が発生するには、そして、解雇を告げた日と解雇日が30日を割っていることが必要です。(30日より前に告げた場合には、発生しません。)
解雇の日は、給与明細や出勤簿などから客観的に判明することがありますが、いつ告げたかについては、あまり書面として残っていないことが多いでしょう。
そうしますと、随分前(30日以上前)に解雇を言い渡したのか、昨日言い渡したのかがわからないということがありえます。
このいつ言われたのかということについても、労働者の側で立証が要求されます。

解雇無効と解雇予告手当の請求の論理の違い

解雇無効で争う場合は、「解雇してないというなら、じゃあ労働者ね。」という論理になるのですが、解雇予告手当は「解雇してないというなら、解雇予告手当は発生しないね。」という論理になります。つまり、解雇無効の場合は、会社側で解雇が有効だと一生懸命立証する必要があるのですが、解雇予告手当の場合は、そもそも解雇なんだということを労働者が一生懸命立証しなければならないのです。

ですので、意外と勝ちにくいのが解雇予告手当なのです。これを回避するには、解雇を言い渡されたなら、実際には心情的なハードルが高いこともあるかと思いますが、解雇日と解雇予告日(言い渡した日)の日付を入れて書面で交付するよう求めることだろうと思われます。
解雇日、言い渡し日そのもののを記載すべき根拠とはしていませんが、解雇理由証明書といって、解雇された場合に、解雇された場合に解雇の理由などを書面で求める権利が労働者にはあります。(労働基準法21条1項)これが交付されれば、解雇であることは立証できたといって基本的に間違いありません。もし、これを書かないと言えば、労働基準監督署に指導を求めることも可能です。

労働基準法21条1項(解雇理由証明書の根拠条文)

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない

解雇予告手当の請求方法

普通に払ってくれればそれでよいですが、そうでない場合は、労働基準監督署に相談するか、内容証明で請求をかける。またはあっせん手続きといって、労働局での話し合いをするというものもあります。(但し、あっせん手続きの参加には強制力がない。)
それ以外では、裁判所での話し合い(簡易裁判所における民事調停)の他、訴えを起こすということも考えられます。訴えを起こす裁判所は、多くの場合は簡易裁判所になるものと思われます。(140万円までの請求は簡易裁判所が管轄になる。)

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