業務トピック

高金利は返せなくも不思議なし

金利は返還可能性のリスクに影響を受ける

日本で最も権威ある法律書の一つである注釈民法では、利息について以下のような記述があります。

「元来利息中には、元本を利用できないことの対価と信用供与に伴う危険の保険料とを包含せられている」(注釈民法(15)(有斐閣) 45項 森泉章)

「ちょっと何言ってるかわからない。」という感じかもしれません。
貸している間は元本は使えないというのはまぁそうかなと思いますが、危険の保険料ってなに?という感じではないでしょうか?

これと似ているのに違うものを示して比べてみましょう。
最近はオンライン動画があるので利用機会が減ってきましたが、DVDのレンタル料を考えてみてください。
ある映画のDVDのレンタル料は、新作、旧作の違いはあれど、「誰が」借りても、基本的にどの作品も同じですよね。
DVDのレンタルの場合、同じものを借りて、同じものを返します。
その間に借りた人は、観るという利益が得られます。そのためにお金を払って借りるのですから当たり前ではあります。
観るという利益、これを使用利益と呼びます。
使用利益の代金はつまりはレンタル料です。

ところが、同じ借りるでも、お金を借りたときは、話が変わってきます。
そもそも、1万円札を借りて、同じ1万円札を返すというのはちょっと考えにくいですよね。
当たり前ですが、お金を借りるのは、家に置いて飾ったりして鑑賞するのではなく、使う為に借ります。ですので、使ってなくなってしまうので、返す時には、実際には別の1万円札になるのです。
(使って、別のものを返す。これを消費貸借といいます。)
さて、1万円を借りたときのレンタル料はいくらでしょうか。
それは「場合によりけり」です。

先ほどのDVDの利用料は、「誰が」借りても、DVD一本当たりの金額は同じです。
ところが、お金の場合は、借りた「理由」や、借りた「額」、借りた「人」によって、払わないといけないレンタル料(金利)が違います。
例えば住宅ローンは、低金利です。
ところが、日本における消費者金融は、年率15-20%
もっと言えば、闇金は1000%とか取ります。
同じレンタルなのに、お金とDVDでは、随分扱いが違いますね。

なぜ違うかが、最初の「危険の保険料」という話です。
DVDは返ってくる確率は相当高いですが、お金の場合はそうでもありません。
使ったら、なくなるからです。
ですので、返せなくなる可能性を考えて、金利を設定しないといけません。
この点、住宅ローンが低金利なのは、家という担保を取ったり、収入の状況などをチェックすることで、返済の可能性が相当高く、「危険の保険料」が少なくても、十分に利益が出せるからです。

ところが、消費者金融となると、無担保が普通ですし、返せなくなる人も少なからずいます。
ですので、「危険の保険料」をたくさんつけて、高金利にしないと商売になりません。
つまり、返せなくなる人がそれなりにいることを見込んで(その保険料として)の高金利になっているのです。

闇金は、その顕著なもので、闇金を利用される方は、銀行等から借りれるくらいであれば、闇金など利用しません。そういったところで借りれないからこそ、闇金を利用するのです。
ところが、闇金は「貸したのに、返さないとはどういう了見だ!」などというのです。
闇金の言っていることは、一瞬、「なるほど、確かに」と思いそうになりますよね。
しかし、1000%とかの高金利を取るのは、返せない人がいっぱいいるからこその高金利を取る(危険の保険料を取る)ということを前提としたビジネスモデルなわけです(しかも犯罪)。
そんなビジネスモデルなので、返せない人がいっぱい出てくるのは当たり前です。

貸金事業は投資事業


ちょっと別の場面も考えてみましょう。
貸金業は当たり前ですが、儲けの為にやっています。これは、つまりは投資です。
お金の貸し借りは、国も行います。
アメリカ国債やドイツ国債、フランス国債などの先進国の国債と比べ、トルコ国債、ブラジル国債などの新興国の国債は、ずいぶん金利が高いです。
各国の政策金利など色んな政治経済上の問題があり、金利の説明は単純にはできませんが、大きくは先進国と、新興国の金利が違うのは、新興国は経済力が不安定なので、お金が返ってこないかもしれないリスクが先進国より高いです。その為に新興国の国債の金利は高くなります。

さて、このような中で、高金利を狙って、新興国の国債を買った人が、投資に失敗したとき、皆さんはどう思いますでしょうか。
「投資は自己責任でしょ」となりませんか?
新興国の方が悪い!おかしい!などということにはなりませんよね。

投資の基本の一つに、分散投資という考え方があります。リスクの高いところ1つだけに投資するのは危険なので、多くの投資先にちょっとづつ投資するという考え方です。これを行えば、回収できないものがあっても、トータルでリスク管理を行うことができます。また、リスクの高いところだけにせず、リスクの低い投資も混ぜてバランスを採るというのも必要だと言われます。

さて、消費者金融に戻って考えてみます。
お金を貸して返ってこないのは、投資の失敗です。
一人にしか貸さないと、その人が返せないと、100%損しますが、多くの方に貸付を行うことでリスク分散できます。多くの人に貸付をすることで、リスク分散をし、さらに危険の保険料をしっかり取ることで、返済できない人が出てきても儲けが確保できるようにします。
貸金業者は、リスクを評価し、その上で、多くの方に高金利で貸し付けを行うことで収益を確保するというビジネスモデルを採っているわけです。
つまり、この業態は、返済できない人がいることは、計算済みなわけです。
返済できない人がでてきたとき、貸金業者は、驚くでしょうか。驚くわけがありません。その為に高金利を取っているのですから。







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