刊行されたのが1755年。ロックの市民政府論は1689年。この書籍はロックの市民政府論を強く意識しており、極めて強い批判精神がある。
ルソーはいう。土地に囲いを作って、これは私のものだとした。これが不平等の源泉になると。ロックを狙い撃ちしている。所有権なくして不法行為なし。為政者、そして恣意的な権力。この背景には富める者と貧しい者との身分があり、強い者と弱い者との身分が定められ、主人と奴隷の身分が定められる。
また強く批判するのが自由の放棄についてである。自由は生命と同様に放棄できないとする。ブーフェンドルフの自由譲渡論に対する批判である。
「自由がなくなると、人間の品位が貶められる。生命がなくなると、人間に与えられた存在を消滅させることになる。そしてこの世のいかなる善によっても、これを埋め合わせることができない。」
訳者あとがきにこうある。
「豊かな人はますます豊かになり、貧しい人はますます貧しくなる。金融市場で巨額の資金を動かす人もいれば、コンビニでお握り一つを万引きして殺したり、殺されたりする人もいる。
(中略)国民に主権があるとはどういうことなのか、基本的人権とはどういうものなのか」
ピケティで話題になった富の集中。2021当時、世界全体の所得に占める割合は、上位10%の富裕層が52%に上り、下位50%はわずか8.5%だった。
貧しいものは自由しか売るものがない。人間の品位すら手放せられている。
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