相続の手続きを進めていると、「遺言で一部遺贈があるけど、他の相続とも競合してる…?」と頭を悩ませることがあります。特に不動産の登記となると、どうやって名義を分けるのか、混乱しがちですよね。今回は、一部遺贈と相続が競合する場合の相続登記について、具体例を交えてわかりやすくお伝えします。
一部遺贈と相続の競合って何?
まず、「一部遺贈」とは、遺言で特定の財産の一部を特定の人に譲ることを指します。たとえば、「自宅の半分を長男に遺贈する」と書いてあるケース。一方、「相続」は遺言がない部分や法定相続分に基づいて遺産を分ける仕組みです。
問題は、この二つが重なるとき。たとえば、自宅の半分は遺贈で長男に、残りは法定相続で配偶者や他の子供と分けるとなると、どうやって登記するの?という疑問が出てきます。これが「競合」です。
基本ルール:遺言が優先
競合した場合の基本的なルールはシンプルです:
- 遺言が優先する
遺言で「自宅の2分の1を長男に遺贈」とあれば、その部分は長男のもの。それ以外の部分は、残りの相続人で法定相続分や遺産分割協議で分ける。 - 遺留分に注意
ただし、他の相続人の「遺留分」(最低限の取り分)が侵害されると、減殺請求で調整が入る可能性があります。
たとえば、父親が亡くなり、遺産が自宅(評価額1000万円)だけの場合:
- 遺言:「自宅の2分の1を長男に遺贈」。
- 相続人:母、長男、次男。
- 法定相続分:母1/2、長男1/4、次男1/4。
この場合、長男は遺贈で自宅の2分の1(500万円分)を受け取り、残りの2分の1(500万円分)を母、長男、次男で分けることになります。
相続登記の実務はどうなる?
不動産登記では、所有権の持分を明確に記載します。上記の例で具体的に見ていきましょう。
ステップ1:遺贈分の登記
遺言に基づき、長男に自宅の2分の1が遺贈されます。
- 登記原因:遺贈。
- 持分:長男 2分の1。
- 必要書類:遺言書、戸籍謄本、住民票など。
ステップ2:残りの相続分の登記
残りの2分の1は、法定相続分か遺産分割協議で決めます。
- 法定相続分の場合
母1/2、長男1/4、次男1/4なので、残り2分の1をさらにこの割合で分けます:- 母:2分の1 × 1/2 = 4分の1。
- 長男:2分の1 × 1/4 = 8分の1。
- 次男:2分の1 × 1/4 = 8分の1。
- 結果の持分:
- 長男:2分の1(遺贈)+8分の1(相続)=8分の5。
- 母:4分の1。
- 次男:8分の1。
- 遺産分割協議の場合
たとえば、「残りは全部母に」と全員が合意すれば:- 長男:2分の1(遺贈のみ)。
- 母:2分の1。
- 次男:0。
ステップ3:法務局で申請
遺贈分と相続分をまとめて登記申請します。申請書には、各人の持分を正確に記載。たとえば法定相続分なら:
- 長男:8分の5。
- 母:4分の1。
- 次男:8分の1。
注意点:遺留分と実務の落とし穴
このケースで気をつけるべきポイントを挙げておきます:
- 遺留分の確認
次男の遺留分(たとえば8分の1)は確保されていますが、遺贈が大きすぎると遺留分侵害になることも。揉めたら家庭裁判所行きになる可能性が。 - 遺言の解釈
「自宅の半分」と書いてあっても、どの部分か曖昧だとトラブルに。遺言が明確か確認しましょう。 - 共有名義の管理
登記後、複数人で持分を持つと売却や管理で意見が分かれがち。事前に家族で話し合っておくと安心です。
まとめ
一部遺贈と相続が競合する場合、相続登記は「遺言優先+残りを調整」で進めます。遺贈分を先に確定させ、残りを法定相続分か協議で分けるのが基本パターン。持分の計算や書類がちょっとややこしいですが、家族の実情に合わせて柔軟に決められるのは嬉しいポイントです。
相続って複雑そうに感じますが、一つひとつ紐解けば納得できる部分が多いもの。もし遺言が出てきたら、まずは内容をしっかりチェックして、家族で話し合うところから始めてみてくださいね!