遺言書を作成する際、「特定承継遺言」という言葉を聞いたことはありますか?遺産を特定の相続人に確実に引き継ぎたい場合に役立つこの遺言形式について、今回はその基本的な仕組み、メリット、注意点、そして作成時のポイントを詳しく解説します。遺言書を通じて自分の意志を明確に伝えたい方は、ぜひ最後までお読みください!
1. 特定承継遺言とは?
特定承継遺言とは、遺言者が特定の財産を特定の相続人に「相続させる」と指定する遺言のことです。日本の民法では、遺言による財産の承継方法としてよく使われる形式の一つで、特に「相続させる遺言」とも呼ばれることがあります。この遺言の特徴は、遺産を具体的に割り当て、遺言者の意思を明確に反映できる点にあります。
例えば、「自宅を長男に相続させる」「預貯金を次女に相続させる」といったように、どの財産を誰に引き継がせるかを細かく指定できます。これにより、遺産分割時の混乱や争いを防ぐことが期待されます。
「遺贈」との違い
特定承継遺言と似た概念に「遺贈」がありますが、以下のような違いがあります。
- 特定承継遺言:法定相続人に財産を相続させる場合に使用。
- 遺贈:相続人以外(友人や団体など)に財産を譲る場合に使用。
特定承継遺言は、あくまで相続人に対する財産の承継を目的としているため、手続き面でも遺贈とは異なる特徴があります。
2. 特定承継遺言のメリット
特定承継遺言には、以下のようなメリットがあります。
- 遺言者の意思を明確に反映できる
「この財産は絶対にこの人に渡したい」という希望を具体的に実現できます。例えば、家族が長年住んだ自宅を特定の家族に引き継がせたい場合に有効です。 - 遺産分割のトラブルを軽減
遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議が必要ですが、意見の対立から争いに発展するケースも少なくありません。特定承継遺言があれば、遺産の行き先が決まっているため、協議の手間や衝突を減らせます。 - 手続きが比較的スムーズ
特に不動産の場合、特定承継遺言に基づく名義変更は、遺贈に比べて手続きが簡便です。遺贈では受遺者が単独で登記を申請できませんが、特定承継遺言では相続人が直接手続きを進められる場合が多いです。
3. 特定承継遺言の注意点
メリットが多い一方で、特定承継遺言を作成する際には以下の点に注意が必要です。
- 遺留分の侵害に注意
日本の民法では、配偶者や子などの法定相続人に「遺留分」という最低限の相続分が保障されています。特定の人に財産を集中させる場合、他の相続人の遺留分を侵害しないよう配慮が必要です。遺留分を無視すると、後で遺留分侵害額請求のトラブルが発生する可能性があります。 - 財産の特定を明確に
「自宅を相続させる」と記載するだけでは、どの物件を指すのか曖昧になる場合があります。住所や地番、預貯金の場合は口座番号などを具体的に記載し、誤解を防ぎましょう。 - 遺言の形式を守る
自筆証書遺言の場合は全文自筆、日付、署名、押印が必要です。形式不備があると遺言が無効になるリスクがあるため、公正証書遺言を選ぶのも一つの選択肢です。
4. 特定承継遺言の活用例
以下に、特定承継遺言が役立つ具体的なケースを紹介します。
- ケース1:自宅を特定の家族に残したい
長年家族で暮らした自宅を、長男が引き続き住むことを希望する場合、「自宅を長男に相続させる」と明記できます。 - ケース2:事業承継をスムーズに
会社経営者が後継者に事業用資産(株式や店舗など)を引き継がせたい場合、特定承継遺言でその資産を指定できます。 - ケース3:財産の偏りを調整
複数の子がいる場合、「長女には預貯金、次女には不動産」と分けることで、遺産のバランスを取りつつ希望を反映できます。
5. 特定承継遺言の作成手順
特定承継遺言を作成する際の基本的なステップを紹介します。
- 財産の確認
自分が所有する財産(不動産、預貯金、株式など)をリストアップし、評価額を把握します。 - 相続人への割り当てを決定
どの財産を誰に相続させるか具体的に決めます。この際、遺留分を考慮して配分を調整することが重要です。 - 遺言書の形式を選択
- 自筆証書遺言:手軽に作成可能ですが、形式不備や紛失のリスクあり。
- 公正証書遺言:公証人が関与するため確実性が高く、原本が保管されます。
- 秘密証書遺言:内容を秘密にしたい場合に適しています。
- 具体的な記載を心がける
財産を特定する情報を詳細に記載します。例えば、不動産なら「〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号、地番〇〇番〇」など。