遺言によって不動産を受け取る「遺贈」は、相続とは異なる手続きが必要です。特に、遺贈を受けた場合、遺産分割協議が不要なケースが多く、受遺者(遺贈を受ける人)が単独で登記手続きを進められる点が特徴です。この記事では、遺贈による不動産の登記を単独で進める方法や必要な書類、注意点をわかりやすく解説します。
遺贈とは?
遺贈とは、遺言によって財産を特定の個人や団体に譲ることを指します。相続人が遺産を分ける「相続」と異なり、遺言者の意思に基づいて指定された受遺者が財産を受け取ります。例えば、「自宅を長男に遺贈する」「土地を友人Aに遺贈する」といったケースです。遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」がありますが、不動産の場合は通常「特定遺贈」に該当し、特定の財産が対象となります。
遺贈の大きな特徴は、遺産分割協議が不要な点です。相続では相続人全員の合意が必要ですが、遺贈では遺言書の内容に従い、受遺者が単独で手続きを進められます。
遺贈による登記を単独で進めるメリット
- 協議が不要: 他の相続人と話し合う必要がないため、迅速に手続き可能。
- 明確な権利移転: 遺言書に記載された内容に基づくため、所有権の帰属がはっきりしている。
- 単独申請が可能: 受遺者が自分で法務局に申請できる。
遺贈登記の手続きの流れ
以下に、遺贈による不動産登記を単独で進める手順を説明します。
- 遺言書の確認
まず、遺言書の内容を確認します。自筆証書遺言か公正証書遺言かによって手続きが若干異なります:- 自筆証書遺言: 家庭裁判所での検認手続きが必要です(2020年7月以降は法務局での保管制度を利用していれば検認不要)。
- 公正証書遺言: 検認不要で、そのまま使用可能。
- 必要書類の準備
登記申請に必要な書類を揃えます:- 登記申請書: 「遺贈」を原因として、被相続人から受遺者への所有権移転を記載。
- 遺言書: 自筆証書の場合は検認済みのもの、公正証書の正本または謄本。
- 被相続人の戸籍謄本: 死亡を証明するもの。
- 受遺者の住民票: 現住所を証明。
- 登記事項証明書: 対象不動産の現在の登記状況を確認。
- 固定資産評価証明書: 登録免許税の計算用。
- 登記申請書の作成
法務局のウェブサイトや窓口で様式を入手し、以下のように記載します:- 申請人:受遺者の氏名・住所。
- 登記原因:遺贈(遺言の日付を記載)。
- 不動産の表示:登記事項証明書に基づく。
- 登録免許税の計算と納付
遺贈による登記の登録免許税は、不動産の固定資産評価額の1000分の20(2%)です。例えば、評価額1000万円の不動産なら20万円となります。納付は収入印紙を貼るか、現金で支払います。 - 法務局への提出
管轄の法務局(不動産の所在地を管轄する)に書類を提出します。郵送または窓口で申請可能です。提出後、審査が完了すれば登記簿に受遺者の名義が記載されます。
具体例でイメージする
例えば、Aが「自宅を友人Bに遺贈する」という公正証書遺言を残して亡くなったとします。Bは以下のように手続きを進めます:
- 公正証書遺言の謄本を取得。
- 父の死亡を証明する戸籍謄本と自分の住民票を用意。
- 自宅の登記事項証明書と評価証明書を取得。
- 登記申請書を作成し、「遺贈」を原因として記載。
- 登録免許税を納付し、法務局に提出。
他の相続人(例えば兄弟)との協議は不要で、長男単独で手続きが完了します。
注意点
- 遺言書の有効性: 遺言書に不備があると無効になる可能性があるため、内容をよく確認。疑問があれば弁護士に相談を。
- 遺留分との関係: 遺贈が他の相続人の遺留分を侵害する場合、減殺請求されるリスクがあります。
- 期限: 2024年4月から相続登記が義務化され、遺贈も3年以内に手続きしないと過料が課される可能性があります。
- 専門家の活用: 単独で進められるといっても、書類作成や法務局対応に不安がある場合は司法書士に依頼すると安心です。
まとめ
遺贈による不動産登記は、遺産分割協議が不要なため、受遺者が単独で手続きを進められる点が大きなメリットです。遺言書の内容を基に、必要書類を揃えて法務局に申請すれば、スムーズに所有権を移転できます。ただし、遺言の有効性や税金、遺留分の問題に注意しながら進めることが重要です。遺贈を受けた方は、この手順を参考に早めに手続きを始めてみてください!