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除籍謄本が滅失している場合の相続登記を最新ルールで解説

相続登記を進める際、被相続人の戸籍関係書類が必要ですが、除籍謄本が戦争や災害などで滅失している場合があります。以前は上申書が必要とされていましたが、最近の法務局の運用変更によりその必要性がなくなりました。本記事では、除籍謄本が滅失した場合の相続登記の手続きを、最新のルールに基づいてわかりやすく解説します。

除籍謄本が滅失するケースとは?

除籍謄本とは、戸籍から全員が抜けた状態の写しで、相続人を確定するために出生から死亡までの連続した書類が求められます。しかし、以下のような理由で滅失することがあります:

  • 戦争による焼失: 第二次世界大戦中の空襲で戸籍が失われた。
  • 自然災害: 地震や火災で役所の記録が消失。
  • 保管期間の経過: 平成22年6月以前は保管期間が80年で、それを超えた戸籍が廃棄された。

こうした場合、通常の戸籍収集ができないため、代替手段で対応する必要があります。

滅失した場合の対応策

除籍謄本が滅失している場合、以下の方法で相続登記を進めます。特に、上申書が不要になった点が重要な変更です。

  1. 滅失証明書の発行
    本籍地の市区町村役場に問い合わせ、「除籍謄本が滅失している」ことを証明する書類(滅失証明書、焼失証明書、不存在証明書など)を取得します。
    • 取得方法: 役場の戸籍窓口で申請。被相続人の氏名や本籍地を伝える。
    • 記載例: 「昭和20年の空襲により戸籍が焼失」「保管期間経過で不存在」など。
  2. 残存する戸籍の提出
    滅失していない戸籍謄本や改製原戸籍を収集し、相続関係を可能な限り証明します。例えば、死亡時の除籍謄本や親族の戸籍があれば、それらを活用します。
  3. 上申書は不要
    以前は「他に相続人がいない」ことを証明する上申書が求められるケースがありましたが、2018年の法務省通達(平成30年4月20日付)により、原則として不要となりました。法務局は、滅失証明書と残存書類で相続関係が合理的に判断できる場合、追加の上申書を要求しません。

相続登記の手続き例

具体的なケースで見てみましょう。

  • 状況: 被相続人Aが2020年に死亡。子Bが土地の相続登記を申請。Aの出生時の戸籍が戦争で焼失。
  • 対応:
    1. Aの死亡時の除籍謄本を取得。
    2. 本籍地の役場で「戦争により戸籍が焼失した」旨の滅失証明書を発行。
    3. 必要書類(登記申請書、滅失証明書、死亡時の除籍謄本)を法務局に提出。
  • 結果: 上申書なしで、法務局が受理し、子Bへの相続登記が完了。

このように、滅失証明書と残存書類で対応が可能です。

注意点

  • 法務局への確認: 上申書が不要とはいえ、法務局の判断で追加書類を求められる場合があります。事前に管轄の法務局に相談すると安心です。
  • 相続人調査: 滅失した戸籍に記載されていた可能性のある相続人(例: 隠し子や養子)を見逃さないよう、可能な範囲で調査を。
  • 登記義務化: 2024年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内に申請しないと過料が課される可能性があります。早めの対応を。
  • 専門家の活用: 書類収集や判断が難しい場合、司法書士に依頼するとスムーズです。

先例変更の背景

2018年の通達は、戸籍滅失による相続登記のハードルを下げるための措置です。従来の上申書提出は相続人に負担をかけ、特に高齢者や遠方の相続人にとって困難でした。この変更により、合理的な書類で足りる運用が浸透し、手続きが簡素化されています。

まとめ

除籍謄本が滅失している場合、滅失証明書と残存する戸籍があれば、相続登記を進められます。上申書は2018年の先例変更により不要となり、以前より手続きが簡便になりました。ただし、法務局の判断に依存する部分もあるため、事前相談が鍵です。相続登記の義務化も始まった今、早めに準備を進めてください。戸籍滅失でお困りの方は、この最新ルールを活用して対応してみましょう!

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