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NHKの時効援用とその根拠

結論からいいますと、NHKの受信料の時効期間は5年です。 根拠は民法169条(2020年4月改正まで)

2020年4月改正前の法によりますと、根拠法は民法169条の定期給付債権の短期消滅時効というもので5年が時効期間となります。
民法では原則10年(民法167条1項)と規定しているものを、この民法169条が適用されることで、5年と修正されることになります。

簡単にまとめますと、5年より古いものは、時効手続きをすれば、支払い義務がなくなるというわけです。

時効期間の根拠はいろいろある。

時効期間というのは、民法167条1項で原則の期間を10年と定めているのですが、2020年4月改正前においては、同じ民法典の中や、商法や労働基準法などで、その期間を場合に分けて変えています。
今回と同じ5年の時効期間には、他に会社の債権があります。しかし、これは民法が根拠ではなく、根拠法は商法522条で、商行為については5年で時効になるとしています。商行為がなんであるかというのは、色々あるのですが、ここでは割愛しますが、NHKの受信料債権というのは商行為によって生じたものとは解釈されておらず、商法522条は適用されません。NHKの受信料債権は、定期給付債権というものとして民法169条によって5年になるとされています。法律の世界では、時効5年と言えば商法だと連想してしまいがちなのですが、これは誤りということになります。

NHKの時効期間の根拠法をもう一度


それでは、NHKの受信料とは何かですが、これは定期給付債権であると考えられています。定期給付債権についてお話する前に、ちょっと言葉が似ていてややこしいのですが、まず民法168条で定期金債権というものが規定されていることを確認してみましょう。
定期金債権というのは、定期給付債権という水の生まれる泉のようなもので、簡単にいうとテレビ(正確には契約が必要ですが、この論点は今回は割愛します。)があると、受信料という水が、その泉から湧き始めます。(この泉を定期金債権と呼びます。)
そして、泉から湧いてきた水を定期給付債権といいます。
最高裁では、1水(受信料)の時効期間は何年か
2この泉を放置したら、それ自体時効になるのではないか。
という2点について結論が出ています。

まず1の時効期間(受信料)ですが、NHKは民法の原則である時効期間10年を主張しました。しかし、最高裁は、これは定期給付債権であるので、5年だと判断しました。
これが、一番最初に書いたNHKの時効が5年だという根拠になります。
つまり、泉から湧いた水だと考えるのが適当だと裁判所は言っているわけです。

さらに2点目につき、NHKの受信料が定期給付債権(泉から湧いた水)だということは、元は定期金債権(泉)だということになるので、定期金債権自体(泉)を放置したらそれ自体時効になるのでは?という点について(168条は場面によって10年もしくは20年で泉は時効になるとしています)、裁判所は、これは時効にならないと判断しました。
というのは、定期金が時効になれば、もう泉は枯れて何も湧かないはずなんですが、泉と対価関係にあるはずのNHKの番組が見れてしまうとなると、請求通りに払っている人とバランスが取れないことになり、今後一切支払わなくてよいという結論はおかしいと最高裁はいうのです。
結局のところ、すでに湧いた水(受信料=定期給付債権)については過去5年より古い分は時効にかかりますが、それ以外(ここ5年分)は時効かからないということになります。

民法改正後も時効は5年だが、根拠が変わる。

なお、2020年4月民法改正により、民法169条(定期給付債権は5年で時効)は削除されます。これは2020年改正施行民法の時効の一般原則期間が5年(もともと10年だった)になるので、5年=5年で、同じ結論になって、民法169条は要らないだろうということで削除が決まったという経緯です。つまり、ストレートに民法の一般原則が適用されて5年との判断になります。結局、実質的な変更はなく、今後も時効期間5年と考えることになります。

NHKの時効には手続きが必要

なお、時効については、その手続きをしなければ効力が発生しませんので、NHKは過去5年以上遡って請求しています。これに対し、時効手続きを行えば、支払わないといけない受信料は5年分に縮減されることになります。

時効手続き前にやってはいけないこと

時効手続きをする前に支払ったり、債務を認めてしまうと、時効手続きがあとからできなくなる恐れがあります。 というのは、最高裁で、一旦時効手続きをしないと思わせるようなことをした場合には、やっぱり時効にするので!というのは、信義に反するとして、時効が使えなくなるとなっているのです。信義に反するというのは、民法1条2項の信義則というものが根拠になっています。
法律上の位置づけは、時効手続きをした場合でも、信義に反するような事情があるとしてNHK側が主張立証すれば、時効の効果が発生しないとすることができるという理屈になります。
もし、なんらかの理由でNHKが言うようには信義に反さないような事情があれば、さらに反論を加えて、時効の効果はやはり発生するということもありえますが、こういった状況になりますとなかなか大変ですので、誤った対応とならないように専門家を使うなど慎重な対応をすることが望ましいと思います。

費用

当事務所では、時効手続きについて 1件27,500円(税込) (+実費1539円)とさせて頂いております。 成功報酬はありません。

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