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債権譲渡と時効 アビリオや日本保証に勝てることも。

通常は5年経過前に訴えられると時効ができない

訴えを提起しますと、2020年改正前民法によれば、時効が中断し、2020年改正後民法によると時効が猶予され、時効の完成を妨げます。(言葉は変わりますが、実質的には変わりません。)つまり、時効期間完成前に訴えを提起されますと、時効にならずに裁判は時効による解決はできなくなるというわけです。

しかし、時効完成前の訴えでも勝てることがあります

しかし、債権譲渡が行われて、「新」債権者からの訴え提起の場合は、単純ではありません。逆転が可能な場合があります。
一点目は、オリンポス債権回収や、アウロラ債権回収にみられるような前の会社がつぶれているというような中小業者の債権を買い取っている業者の場合。
二点目は、アビリオ債権回収(プロミス、新生フィナンシャルから債権譲渡)や、日本保証(武富士から会社分割。会社分割の場合も同じ理屈になっています。)などで、債権者が変わっている場合に、「時効ぎりぎり」で訴えられた場合です。

勝てるケース1 前の会社が倒産している場合(民法467条1項)

一点目を詳しく見ていきましょう。新債権者が請求する為には、まず、そもそもの請求債権の発生原因の事実(お金を貸したなど)とその弁済期の到来、そして債権譲渡を基礎づける事実が必要です。(当該債権をいついつ売買で取得したなど)
これに対して、債務者は、「新」債権者に対して、「前」の債権者からの債権譲渡の通知又は、債務者があえて「新」債権者を債権者と認めるまでは、「新」債権者を債権者として認めないという反論が可能です。(対抗要件の抗弁といいます。)
これは「前の債権者から債権をもらいました」などと新債権者が勝手にウソを言っているかもしれませんし、前の債権者がきちんと債務者に告げるまでは、債務者は「ホントかな?」と思ってもしょうがないということを規定したものです。
ホントだと「新」債権者が主張する為には、「前の債権者から新債権者に譲渡しましたよ」と「前」の債権者が通知するまでは、それをウソかもしれないから支払いませんという反論が債務者はできるいう理屈なのです。
 この対抗要件の抗弁に対しては、「新」債権者は、「前」の債権者に頼んで債権譲渡の通知を送ってもらうということ(又は以前通知したことの証拠)が必要となります。
しかし、「前」の債権者が倒産したり、行方不明であったりすると、債権譲渡通知は今更送りようがありません。こういう場合には、これだけで勝訴できるということになります。

勝てるケース2 債権譲渡通知が時効完成前に来ていない場合(民法468条2項)

先ほどの反論場面は、前の会社が倒産している場合ですが、今も営業している会社であったりすると、後日、通知が届きますので、先ほどの対抗要件の抗弁では勝てないことになります。 しかし、実は、もう一つ、抗弁がありえます。それが、民法468条2項の対抗要件取得前(前の債権者からの債権譲渡通知前)に旧債権者に起こった事由に関して、新債権者に債務者は対抗できるというものです。

実は、「前の債権者からの債権譲渡通知がなされるか」、「債務者が新債権者を債権者と認めるまで」は、債務者にとっての債権者というのは、「前の」債権者であって、「新」債権者は、債権者でもなんでもないのです。これは、訴え提起をしようが、何をしようが、債権者でないものが訴えを提起したに過ぎず、訴え提起時には、「新」債権者の行為は、債権者が行ったものではないとして、時効中断(猶予)効を生じません。これは事後的に「前」の債権者から債権譲渡がなされたとしても、訴え提起時にその効果は遡りませんので、債権譲渡通知前に時効期間が完成した場合は、時効完成前に訴えを提起した場合であっても、時効の抗弁によって勝訴できるのです。

債権譲渡通知をずいぶん前に送ったということが真実であっても、債務者はそんなものを送られた記憶がないことも多く、 一般的に、債権譲渡通知は普通郵便で行われており、 「新」債権者には、「前」の債権者が債務者に債権譲渡通知が到達したことを立証する術はまずありません。というのは、普通郵便で送ったとする記録があっても、あくまで送ったことに過ぎず、着いたかどうかはわかりません。普通郵便で送ったものについて、送られた側が認めれば別ですが、記憶がないとなれば、裁判所は、到達したことについて事実認定はそうそうできません。(もちろん、受け取った記憶がある場合には、ウソはついてはいけません。)
こういう場合、新債権者は勝った気で裁判を提起していることがままありますが、実は勝てるというケースなのです。
これは、昭和の時代に、最高裁判例(当時は大審院という名前でした)が複数回出ており、その後も変更されていません。
この点はあまり知られていない論点で、法律相談でも間違った回答になりやすい論点です。「負けた、時効できない」と思いがちですので、注意が必要です。

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