業務トピック

相続登記に権利証は必要か

相続登記では、法律的には権利証を必要としていません。

といいますのも、権利証を法律が要求している場面は、名義人の権利がなくなったり、制限される場面です。そして、これには一方で名義を得ることになる人がいるという、2者対立構造があります。

例えば、不動産の所有権を売却する場合、売主は、お金を得ることにはなりますが、「不動産」だけで考えた場合、その不動産の名義を失うことになります。そして、買主は、お金は払いますが「不動産名義」を手に入れます。

登記の申請書では 

権利者 買主A

義務者 売主B

という形で表記されます。

不動産を担保にして、お金を借りるときは、お金は得られますが、その代わり、いざというときには、競売にかけられてしまうという「抵当権」の登記をするときには、やはり、その不動産の権利が弱くなってしまうので、権利証を提供しなければ、法務局は本当のことだと信じないことに基本的になっています。そして、銀行は抵当権の名義を得ることになります。

登記申請書では

抵当権者 A銀行

設定者 所有者B

という形で表記されます。

これら二つの共通するところは、所有権名義人と、権利者(抵当権者)との対立構造があるという点です。2者対立構造を取り、不動産について権利を失ったりする不利益がある場合に、権利証を要求します。

ところが、相続登記の場合は、このような場合に当たらないのです。

登記申請書では

相続人(被相続人A)

    B

という形で表記して申請します。被相続人Aというのは、亡くなった名義人の方をわかるように書いてあるという意味合いで、登記の申請者は、相続人Bによる「単独」の申請となります。つまり、2者対立構造になっていないのです。

ですので、被相続人Aの権利証は要求されていません。

相続人であることは、戸籍などで証明することになります。但し、戸籍が廃棄されていたり、戦争で燃えてしまってないなどの場合には、事実上、相続人であることを補強する為に、権利証を添付することがあります。(他人が権利証を持っているはずがないということが通常であるので、そこを利用して戸籍等の代わりに添付するという意図)

ですので、権利証は基本的になくても登記は可能です。ただ、戸籍等が足りない場合以外の場面でも、どの不動産を持っているのかを特定したり、状況把握をする為にも権利証はあった方が望ましいです。

法的には要求されませんが、重要な資料になるということで考えておくとよいかと思います。

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