業務トピック

相続登記と換価分割

代表となる相続人名義で相続登記をし、不動産を売却したうえで、売却代金を分割する方法を換価分割といいます。

この方法、便利に見えて、とてもリスクが高いので、お勧めしていません。

国税庁と法務局は対立している

換価分割についての「国税庁」(税務署)の考え

国税庁は、誰かひとりの名義で相続登記をし、そのあとに売却をしてお金を配るというトータルでの分割方法での相続の計算(換価分割)を認めています。つまり、国税庁は相続の一環として便宜上代表相続人の名義とする相続登記を認めています。

但し、どのような場合に、それを認めるかについては、各税務署での判断となりますので、結構不安定なところがあります。

換価分割についての「法務局」の考え

一方、法務局はこのような便宜上の相続登記を否定しています。

法務局の立場は、便宜上の名義というのは、誰の所有であるかということを公示する登記制度の根幹を揺るがすものであるとして認めていません。

ですので、便宜上の代表相続人とする旨の遺産分割協議書を作っても登記は通りにくいです。(なので、表現的には、税務署に100%合わせた遺産分割協議書の表現では登記が通りにくい。)

法務局は、売却のための便宜上の名義人というものを認めておらず、所有権そのものは、名義人となる代表者に全て承継されると考えています。

従って、代表相続人の名義にしますと、物権上完全に代表名義人に支配権があると法務局は考えますので(所有権は代表相続人に移る。)、代表相続人(またはに万一があった場合には、その相続人)による行為のみで、完全に処分が可能となります。

債権法的(お金を配ることを求める権利)には、処分方法や分け方について義務を生じさせられる可能性はありますが(有効性については疑義がないわけではありません。)、代表相続人が単独で売却して、そのままお金が配られなかったとしても、債権として他の相続人は代表相続人に請求できるだけで、現実化されるかについて理屈上はそうはならない可能性もあります。このように、後で意見が食い違うと、うまくいくものも行かなくなるというリスク、代表相続人に二次相続が発生すると訳がわからなくなるというリスクがあります。

換価分割は税金が複雑。①換価分割だと管轄税務署が判断した場合

登記を通すには、100%税務署に合わせた形での表記を遺産分割協議書に表すことが困難ですので、どうしても、どっちでも読めるような記載ぶりを避けられません。
なので、税金的には複数の可能性があります。
税務署が換価分割を前提とした計算を採用した場合、売却益にはそれぞれの取得分に応じた譲渡所得税がかかります。(取得利益を等分したものに課税。)

換価分割は税金が複雑。②換価分割だと管轄税務署が判断しない場合

換価分割として便宜の名義人として認めないと税務署に評価された場合、

  • 譲渡所得税は、代表相続人に集中します。(譲渡益が名義人である代表相続人のものだという理解)
  • さらには、売却金を他の相続人に分配すると贈与税が課税されます。

換価分割の方法を採らない場合(共有名義にして、全員で売却)

換価分割は、法的安定性が低く、税務リスク、万一の場合の二次相続などの問題は生じえます。

このような不安定さを避けるには、相続人全員で共有名義に相続登記をしたうえで、全員で売却するという方法もあります。但し、その場合は、全員が相続登記と売却の登記に全面的に手続き参加するという負担があります。ただ、こっちの方が手続きは圧倒的に安定します。

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