業務トピック

相続放棄と意思表示

相続放棄には、意思表示説と法定効果説がある

法定効果説は、3か月の熟慮期間が過ぎると単純承認の効果が自動的に発生するというもので、当事者の主観は一切考慮されません。一方、意思表示説は3か月の熟慮期間が過ぎると単純承認という意思表示をしたと考えるもので、こちらの場合には、当事者の主観が考慮されます。

裁判所の立場は意思表示説

法定効果説を採っている裁判所はありません。意思表示説が判例の立場です。
だから、なんなのだということなのですが、意思表示には常に勘違いがという問題がついてくることが大きな違いです。
この勘違いには、法を知らないことで、3か月経ったというのもこれに含みます。
「法の無知は許さじ」などと聞いたことがあるかもしれませんが、許します。刑法の世界観とはずいぶん違うということが指摘できます。

意思表示説を採ると、相続放棄はどうなる?

意思表示説を採りますと、単純承認をしたときでも、「あれ、やっぱり勘違いだったんで、放棄するわ」ということが、結構通ります。さらに、家庭裁判所の実務は、この勘違いに相当寛容です。
これは、明白性基準説といって、「それ、勘違いじゃないよね」ということが明白でない限り、相続放棄を受理するという立場です。


他の裁判所も明白性基準説に立つ?


明白性基準説は家裁実務の立場であり、簡裁・地裁はこの立場に立っていません。
どういうことかというと、家庭裁判所で受理された相続放棄について、他の利害関係者が、あの相続放棄おかしいよね?ことを前提に訴えを提起した場合、簡裁・地裁は、明白性基準説のように広く勘違いを認めることはありません。
これはどういうことかというと、家裁実務では、文句言いたいやつが、改めて争えばいいのだから、門前払いはしないようにしようという考えに立ちます。
そうしますと、文句言いたいやつ=つまりは簡裁、地裁に訴えを起こさた場合は、門の中の話なので、慎重に審理することになり、やっぱり相続放棄は認めませんということがありえます。
しかしながら、みながみな、提訴するわけではありませんので、家裁が相続放棄を受理したことで、争う人がいなければ事実上解決する事例の方が圧倒的に多いと言えます。


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