業務トピック

支払督促と時効援用

時効完成「前」の支払督促は、時効中断(更新)となり、負けてしまう。

時効完成前に、支払督促の申立てがされますと、時効は中断(更新)されます。多くの場面では時効期間5年であることが多い為、5年以内に支払督促がされている場合は、時効が成立していない可能性が高いです。しかしながら、意外と支払督促は5年経過後(時効完成後)に行われることも珍しくなく、支払督促が来たらもうだめだとは思わないようにしてください。(支払督促は簡易裁判所から届きます。基本的には郵便配達員が手渡しして配達します。)

時効完成「後」の支払督促は、時効で勝てる

支払督促が裁判所から届いても、それが確定する前(支払督促は2回来ます。2回目が来てから2週間で確定します。)であれば、「督促異議」という手続きを採ることができます。督促異議をしますと、一般の裁判に移行しますが、そこで支払督促の申立ての段階ですでに5年以上たっていれば、時効の主張を行えば裁判に勝つことができます。
但し、裁判官は「これは時効ですね」とアドバイスしてくれるわけではないので、こちらから積極的に時効の主張をしなければ、時効の主張が採り上げられることはなく、誤って敗けてしまうので注意が必要です。
ただ、実際の手続きでは、督促異議を申し立てた段階で、債権者は支払督促の取下げを行うことが一般的です。しかし、取り下げられてしまうと、裁判は開かれませんので、裁判上で時効主張することができません。
完全に相手方の請求権をつぶす為には、支払督促が取り下げられた後に、内容証明で時効援用手続きを行うことが必要です。

(当事務所での時効手続きの場合は、内容証明を送った後に、さらに相手方に電話して文句がないかを確認しています。というのは、時効手続きをしても、相手方から「これ時効でしたね」などという連絡は9割方ないので、結局どうなったのかを確認しないと、相手方社内で、どう処理されたのかがわからないのです。※支払いをした場合は、契約書が返却されたりしますが、時効手続きの場合は、返却義務がないので、文書が送られてくることもほとんどありません。)

時効完成後の支払督促を放っておいたらどうなる?

それでは、時効完成「後」に支払督促の申立があり、それを放っておいた場合はどうなるのでしょうか。実は、時効完成後の支払督促が終わってしまった場合には、時効援用がなお可能です。

※一方で、時効完成後に訴えが起こされて、そのまま敗けてしまった場合には、さらに10年経たないと時効になりません。(※訴えが起こされたときに、そのままにせずに、その裁判内で時効の主張をした場合には勝訴可能です。その裁判内で時効主張しなかった場合と、裁判内でした場合には結論が異なります。)

一般の裁判と支払督促の違い

訴えと支払督促にどのような違いがあるかと言うと、裁判官が関与するか否かという点です。訴えについては、裁判官が扱いますが、支払督促は裁判所書記官が扱います。
このことによって、時効完成後に、訴えを起こされてそのままにして敗けてしまった場合と、時効完成後に支払督促がなされて、そのままにして確定してしまった場合とで効果が分かれます。

支払督促ではどのような効果が違う?

どういうことかと言いますと、裁判官が関わりますと、その裁判が終わるまでに客観的に主張できたものについては(主観的にではないので、気づかなかったとかはダメです)、裁判が終わった後には主張できないということになっています。これを既判力といって、蒸し返しの禁止をしているわけです。
この既判力というものによって、一般の裁判では、時効主張をせずに裁判が終わってしまうと後から時効主張ができなくなります。
ところが、裁判官の関与のない支払督促の場合には、この既判力がありません。ですので、一度発生した時効援用できるという、いわば時効権のようなものが、既判力によって制限されませんので、支払督促の手続きの後も、なお、時効主張が可能となるのです。

時効完成後の支払督促後の時効は必ず通る?

但し、本来支払督促の申立てを時効完成後にされたなら、その申立のときに、時効を主張すること(支払督促に異議を出すと、一般訴訟に自動的に移行しますので、そこで時効を主張する)ができたわけですから、今更感があります。

ですので、さらにその後で、あの時の支払督促は関係なしに時効できるとして、裁判に持ち込んだ際には、裁判所の判断によっては、確かに、既判力によっては制限されないが、その前後の事情によっては、そのときに時効主張しておくべきだとして、時効主張を採用しない。(時効はおかしい、信義則違反との主張が債権者側からあった場合の話ですが。)との、判断がないとは絶対には言えません。

ですが、そもそも債権者の側で「あの時の支払督促」をきちんと「訴え」にしておけば、既判力を得られないということもなかったわけですので、債権者側が、訴えではなく、あえて効力の弱い支払督促を選択したわけですから、それは自己責任として、時効がなお採用されるとすることは十分に期待できようものと思われます。
ですが、解決が不安定になってしまうことには違いありませんので、支払督促が来た時点できちんと対応して解決してしまう方が安心だと言えます。

費用

当事務所では支払督促等、裁判になっているケースの時効処理については、44,000円(税込)、裁判になっていないケースは1件27,500円(税込)とさせて頂いております。 いずれの場合も 成功報酬はありません。
※但し、別に実費が1539円かかります。
また、件数が多い場合には、法テラスといって国の法律費用の立替制度をご利用頂きますとより安価での手続きが可能となっています。

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