業務トピック

相続登記と和解調書

相続登記では、裁判所での戸籍に代わるものとして和解調書が常に使えるかはわからない

相続登記は、簡易裁判所、地方裁判所で行う一般訴訟での和解調書では戸籍に代わるものとして取り扱えないことがあります。家裁事件の場合、例えば遺産分割調停を行う場合は、相続人の確認を家庭裁判所が戸籍で確定させた上で、これを行いますので、相続人の確定作業が済んでおり、改めて、他に相続人がいるかどうかということを検討する必要がなく、相続登記での戸籍の添付を省略できますが、これは家庭裁判所が職権で確認していますので、法務局としても、これに拘束されます。

相続登記と弁論主義第二テーゼ


一方、簡易裁判所、地方裁判所では、当事者が主張した事実を簡易・地方裁判所が弁論主義第2テーゼで拘束するはずですが、そもそも簡裁・地裁実務は、相続人については非のみ説の立場を採っていることもあり、和解調書はもちろん、調書判決でも、他に相続人がいないことは確認が取れていません。

一方で弁論主義第2テーゼにより上申書に類するような内容については、調書判決であれば、上申書に記載すべき点は、これにて代えることができますが(奈良地裁判決)、そもそも他に相続人がいないか否かについては、相続登記の本来的な添付書類である戸籍謄本類を省略することができません。


簡裁・地裁でも遺産分割協議書としては使える


簡裁・地裁での和解調書の場合には、戸籍については、相続登記の通常の方法に従って、全て手配する必要があります。
一方で、遺産分割協議書については、当人らの主張が弁論主義で裁判所を拘束しますので、調書判決でも使えますし、簡裁・地裁で作成された和解調書内に、「戸籍で確認できた(※戸籍は省略できない)」相続人全員による遺産分割の内容が記載されていれば、遺産分割協議書に代わるものとして登記に使うことが可能です。

このように、家庭裁判所と、簡易裁判所・地方裁判所では審理の方法が違う為、和解調書といっても、確認できている範囲が異なります。同じ裁判所だと思って、相続登記をしようと思うと、後で、添付書類が足りないなんてこともあったりしますので、どこで作成された和解調書なのかというのは、とても重要な論点になります。

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