業務トピック

抵当権抹消と保存行為

抵当権抹消登記は、本来的には、登記義務者である金融機関と、登記権利者である登記名義人全員からの申請でもって行われます。
しかし、登記名義人全員からの申請でなくてもよいのではという議論があり、権利者側は名義人の一部からの申請でもできるとされています。これは保存行為と解釈されています。
対象物件に対して、所有権者は処分、管理、保存ということができるのですが、処分(例 壊す)は全員で、管理(例 人に貸す)は過半数で、保存(例 掃除する)は一人でもできると規定されています。この考えから、抵当権抹消は保存行為として、一部の所有権登記名義人からだけでも申請できると理解されています。

なお、そもそも抵当権抹消登記は、妨害排除請求権と言って、自分の登記をジャマしている登記(空の抵当権の登記)は消す請求権があるという考えからなされていますので、登記権利者は、所有権者だけではなく、他にも後順位の抵当権者からの申請も可能だとされています。後順位抵当権者は、先順位の抵当権者がいなくなれば、回収に有利になるからです。
そうすると、保存行為という解釈をせずとも、自分の権限で消せても当たり前のような気もします。後順位抵当権者という価値を把握しているだけの者が消せるのに、所有権の共有者は実際その物件を利用したりすることができるわけで、後順位抵当権者より強大な権利があるのですから、抵当権の抹消請求するのに保存行為という理屈がいるというのはどうかなと思うわけです。
※これは私が勝手に考えているだけですので、あまり意味のある議論ではありません。

さて、理屈はさておき(注 保存行為とされています。)、一部の所有権者から抵当権抹消の申請は可能となっていますが、登記申請書には、権利者として登記名義人全員を表記することになっています。そして、そのうち、この人が今回の申請人ですよと記載して申請します。

実務上の問題はこの申請人以外の登記権利者の表示についてです。
申請人以外の登記権利者(申請人以外の所有権登記名義人)が死亡していたなら、本来、先に相続登記を入れる必要があります。住所氏名の変更がある場合も同様に住所氏名の変更登記を先行させる必要があります。ところが、その登記申請権限は共有者にはありません。
ですので、抵当権抹消の登記申請書には、他の共有者について登記記録上の氏名住所のまま記載して行うことになります。
しょうがないのですが、これが現実とは異なるのだから、申請書に不実が記載があるので相当ではないのではないかという議論があるのです。

名古屋管区では、これについては構わないという協議が名古屋法務局と愛知県司法書士会でされており、事実上解決されているそうですが、法務省が方針を出したわけではないので、各地の法務局によって言うことは違うかもしれません。

大阪管区において、その共有者の協力が得られないのでしょうがいないでしょという相談を上げた上で、申請を行って通ったことがあります。

基本、通す法務局が多数ではあるとは思いますが、そもそも論、保存行為だからと考えるからこんな問題が起こるのだと思いますが(妨害排除請求権でストレートに権利者だとすれば、そもそも他の共有者を申請書に書かなくてもよいように思います。)、とはいえ、これを言ってもしょうがないことではあります。

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