業務トピック

個人主義 財布は別々の成年後見

成年後見制度は、ドイツ、イギリスが先進で、日本は、ヨーロッパを参考にして、制度導入しています。
成年後見制度のご利用をお考えの方にご説明をするときに、いつも立ちはだかる問題があります。
それが個人主義的な考え方です。

欧米の個人主義とアジアの家族主義

欧米では、早いタイミングで家を出て自活を始めることが一般的だったそうです。個人主義が育つ文化的土壌があったと思います。
このあたりは、経済情勢や社会の変化によっても、また個人の考え方によっても変わってくるでしょうから、欧米人はみなすぐ独立するというとそれはそれで言い過ぎだとは思います。
とはいえ独立しますと、その家計も独立します。

一方、アジアは家から出ない傾向が強いようです。
日本では、とりわけ戦前は家制度がありました。3世代一緒に暮らすのも当たり前ですし、おじさん、おばさんも一緒に住んでいるなんてことも珍しいことではなかったかと思います。
アジア諸国は、今でも家族単位で動く傾向があるようで、日本でも戦後に核家族が進んだとは言え、欧米のように家計分離が進む傾向にはないだろうと思います。

欧米のサイフとアジアのサイフ

欧米では個人主義的ですので、お金の管理も独立して行う傾向にあろうかと思います。

ところが、アジアではお金の管理は家族で一括して行う傾向にあります。
例えば3人の収入から生活をしている場合、3人の収入を合計して、そこから支出します。
財布はいわば一つなわけです。Aさん10万円、Bさん15万円、Cさん5万円、3人で合計30万円。家計支出はこの30万円から出すという感じです。つまり収入の一元化が図られています。

法律は欧米で発展しましたので、当然法律というものは欧米ナイズしてできてますので、法律そのものは、個人主義的な感覚が強いだろうと思います。
成年後見制度もヨーロッパ的思想の影響は少なくありません。
その元では、お金の管理は個人単位で行います。
そうしますと、みんなで30万円で暮らすというのではなく、Aさんは10万円から生活費をいくら出す。Bさんは15万円から生活費をいくら出す。Cさんは5万円から生活費をいくら出す。
それぞれの支出は、それぞれで考えます。この場合、収入は一元化されていません。

成年後見制度は、収入支出の分割化

成年後見制度は、個人主義的な考えでできています。
収入と支出をそれぞれ分けて考えるようになります。
例えば、Cさんは5万円しかないとなれば、Cさんの支出はCさん一人では賄えないかもしれません。
その場合、成年後見的な考えですと、Aさんが自分の支出をして「余ったお金」をCさんに援助するという風に考えます。
さらに成年後見制度では、なぜ援助できるかについても個別的に考えます。
法律上、援助する理由があるかということです。
扶養義務があれば、その履行として支払う。という義務論。
またはAさんが、Cさんを助けたいという意志を実現する。という意志論です。
こういう理屈が立たないと、Aさん→Cさんへのお金の移動は認めにくいというのが、成年後見制度であり、西洋を起源とする法律的な思考になります。

しかし、日本の世帯は、家計を一つとして計算している傾向にあります。
なので、この西洋的な法律論は、あまり日本の文化的に馴染まないと思います。
日本でも世帯が分離している場合は、個人主義でも別に問題はないことが多いです。しかし、世帯が同一ですと、このあたりの調整がなかなか難しいところが成年後見制度にはあると思います。

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