業務トピック

自己破産 生活保護 どっちが先

自己破産と生活保護をお考えのとき、その順番について、どっちが先?同時?というような心配があると思います。
結論から言いますと、弁護士・司法書士に破産の依頼→生活保護申請→法テラス申し込み→破産申立ての順番が最もよいと思います。ネットを見ますと、多くの場合、生活保護が先か破産が先かとの議論しかないようですが、もっと細かく厳密に検討をしてみる必要性があります。
以下、なぜこの順番になるか、詳しく理由をご説明します。


1弁護士・司法書士に破産の依頼

理由は二つあります。

  1. 依頼しませんと請求が止まらず、支払いに追われて苦しい。
  2. 生活保護課が、借金があると保護費から返済するのではないかと「心配」する。

一点目。
弁護士や司法書士に依頼しますと、債権者に受任通知(破産の依頼を受けました)という書類を出します。
これが届きますと、請求は基本的になくなります。

消費者金融については、貸金業法で、受任通知を受領しますと請求規制があるので、請求してくることはありません。(逆に、友人からの借り入れなど金融業者以外は必ずしも止まらない)
なので、まず請求を止めることが必要な場合、まずは依頼が必要です。

二点目。
借金があっても、生活保護は利用できます。借金を理由に生活保護を却下することはできません。違法です。
ただし、一方で生活保護費からの借金返済は禁止されているので、「債務整理をしてからにしてほしいな」と担当者は「思います」。思うだけです。借金があるからといって生活保護がダメになるという法的根拠は全くありません。ただ、嫌がられることが事実上あります。
なので、まずは弁護士、司法書士に依頼したので、借金返済することはないということで「安心させてあげる」ということができれば、「無難」です。
あくまで保護課の気持ちの問題ですが、うるさく言われるかもしれませんので、先に破産の依頼をしてしまうと安心です。ただ、生活費の問題は、すぐに対応が必要だったりしますので、依頼をすることを待ってられない場合は、生活保護の申請を先に行うということもありえると思います。

2生活保護の申請


保護申請しますと、原則14日後(最長30日後)に審査の決定がでます。
以前は、めちゃくちゃなことを言って、追い返す事例が全国的に問題になっていましたが、最近は比較的まともになってきました。
市によっては、弁護士・司法書士に依頼していることの確認を取りたいというところもあります。


3法テラスの申請

法テラスは、破産の費用の立替をしてくれる機関です。
これがなぜ、生活保護の後かですが、生活保護の利用をしてますと、100%立替金の返済が猶予されるからです。猶予がされない場合は、法テラスの決定から約2か月後に支払いが開始になります。
生活保護を必要とする方は、このような負担は困難です。なので、猶予が必ずとれる生活保護申請の後に行うのがよいということになります。
なお、この立替金は、破産手続きが全て終わった後に、なおも生活保護利用の見込みが高い場合は、改めて審査の上、免除することができます。ですので、破産が終わったときには、働いて収入を得るようになったので、生活保護はもう利用しなくなったというような場合には、免除の対象にはなりません。
最初から免除ではなく、立て替えなんですというのを法テラスは何度も弁護士・司法書士に通知をしていますので、誤解が生じやすいところなんだろうと思います。

ところで、破産の依頼をするときに法テラスの申し込みもする必要があるのではないかということを言われることがあるようです。
この点は理論上、そのようなことはありません。

弁護士・司法書士と依頼者は、2者間での委託契約を根拠として、破産手続きを始めます。
法テラスは、弁護士・司法書士、依頼者、法テラスの3者間において、「費用」についての契約をします。
これらは別々の話ということです。
法テラスの申し込み前でも、弁護士・司法書士と破産の委託契約を行うことは有効です。

元々、委託契約(厳密には弁護士には委任、司法書士の場合は準委任といいます。)契約は、報酬の有無は要件になっていません。売買契約の場合は、売買代金が契約の要素(いくらで買うかという話なので、金額が要素になる)になっていますが、委任は、要は、「頼む」ということなだけで、それがいくらかというのは、契約の要素ではないので、法テラスの申請前に、破産手続きの委託契約を行うことは、なんら法的に整合性が取れないわけではないのです。
ですので、法テラスが依頼と同時である必要性は必ずしもないということになります。
ただ、すべての事務所がこれに応じてくれるかというと、何とも言えません。



4破産申立

法テラスの利用は、破産申立前でないと使えませんので、必ず、破産申立は法テラスの後になります。
生活保護利用の場合、最初の審査段階で、役所が、本当に生活保護を必要とする状態であるかを調べています。(銀行などに照会して調査する。)
裁判所としても、役所がそのような調査を済ましていることはわかっていますので、事実上、破産の審査は緩めになります。財産隠しの心配をあまりしなくてよいからです。また、生活保護という性格上、その金額は、最低限の生活費という理屈ですので、借金の返済は不可能であることが理屈上認定できますので、その点で、収入から支払いが可能なのでないか?という疑問を裁判所が持たなくて済みます。(支払い可能な場合は、破産できない。生活保護利用の方は、収入の点の問題が発生しない。)
ですので、破産よりも生活保護利用が先行するほうがよいということになります。

最近の記事

相続登記に必要なものとは?

支払督促と時効

相続放棄は3か月経ったらダメなのか?

PAGE TOP