業務トピック

無権代理の効果不帰属説と浮動的無効説

(無権代理)

第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

(無権代理行為の追認)

第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

無権代理は難しい

毎年、司法書士向けの裁判の研修を担当していますが、無権代理は、とてもつまづきやすいポイントです。有権代理との対比で捉えらたときに混乱しやすく、民法113条1項の、「その効力を生じない」という書きぶりの為に、抗弁であると勘違いされやすいです。(要件事実としては否認が正しい)

有権代理の要件事実は、①法律行為②顕名③先立つ授権ですが、この最後の③の先立つ授権がない場合に、無権代理であるという言われた方をします。
要件事実である③が足りていない場面ですので、「無権代理だ」というか、「有権代理でない」くらいの方が表現としては、要件事実論的にはわかりやすいのですが、これが要件事実ではなく、法律論として考えると単純にそうだとも言い切れないところに難しさがさらにあります。


効果不帰属説

先立つ授権がない場合、委任者とされる方(委任してないので委任者というのも変ですが)に、効果は帰属しません。そうしますと、無権代理とは要は効果不帰属なんだという捉え方が可能です。これが効果不帰属説の考え方で、要件事実論での有権代理の見方と親和性があり、理解しやすいです。一般的には、次の見解よりも、この理解がされている方が多いと思います。

浮動的無効説

もう一つは、効力を生じないという表現を素直に捉えて、無効だという風に読みます。
これで問題になるのが、民法116条との関係です。無権代理は、後から追認すると遡及効があるのです。無効行為の追認は遡及効がないはずですが(新たな法律行為と見る)、民法116条に遡及効が書いていますので、元の行為時に遡及します。そうしますと、そもそも無権代理は無効行為だったのかという疑問が出てきます。
そこで、この説では、浮動的に無効であって、後から変わるかもよということで、完全に無効だとはしないという考え方です。

実務的には、どってでもよいのですが(結果に影響がない)、法律の勉強をするときには躓きやすい論点となっています。

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